被災者を救うプロフェッショナル、「災害支援ナース」になるには

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

私たちは自然災害と隣り合わせで暮らしています。大規模な災害によって傷病者が多数発生したとき、現場に出動し、救命処置や活動支援を行うのが「災害支援ナース」です。

 

災害の種類

日本は自然災害の多い国ですが、それ以外に、交通事故や火災などの人為的な災害も各地で起こっています。

 

  • 自然災害:地震、津波、集中豪雨、台風、洪水、竜巻、山噴火、雪害、干ばつなど
  • 人為的災害:交通事故、爆発(爆弾)、大火災、炭坑事故など
  • 特殊災害:核、生物、化学物質による災害

 

災害サイクルと看護の必要性

災害発生からの一連の過程をサイクルとして捉えた概念のことを災害サイクルといいます。医療・看護のニーズは時間の経過とともに変化していきます。急性期から静穏期に分け、時期ごとに応じた適切な医療・看護ケアの提供が重要になります。

 

急性期…災害発生直後~1週間

発生から48時間を超急性期とし、人命救出や救助が最優先。負傷者のトリアージ・応急処置・搬送をスムーズに行うことが重要です。

  • 人命救出・救助
  • トリアージ・応急処置・搬送
  • 救護体制作り
  • 避難所立ち上げ
  • 救命、救急看護ケア
  • 遺体の安置、遺族のこころのケア
  • 避難所の巡回診療 など

亜急性期…1週間〜6カ月

避難所の生活環境が悪化し、健康上の問題が発生する時期。健康管理の継続と改善のための体制づくりが必要となります。ボランティアスタッフを受け入れ、地域社会の立て直し活動などを行なっていきます。

  • 避難所生活によるストレスなど、心のケア
  • 健康生活の支援
  • 地域社会の立て直し支援活動
  • 慢性疾患看護ケア
  • 巡回診療
  • 感染症対策 など

慢性期…2〜3年

避難所から徐々に自宅・仮設住宅・復興住宅へと移り、環境が変化していく時期。安全、安心、快適な生活が過ごせるよう、健康管理指導や心のケア、自立支援など長期的なサポートが必要です。

  • リハビリ
  • 被災者の福祉、生活指導
  • 巡回訪問、健康生活アドバイス
  • 寝たきり防止
  • 自立支援
  • 長期的な心のケア
  • 被災地の復興支援 など

静穏期…3年以降

災害発生に備え、防災訓練、防災設備の点検・整備、コミュニティ作りなどが必要になります。医療関係者だけでなく、行政、地域住民が連携して取り組んでいくことが重要です。

  • 継続的な巡回訪問、健康生活アドバイス
  • 防災設備の点検・整備
  • 災害予防
  • 救護組織
  • 医療に必要な物品の準備
  • コミュニティ作り
  • 防災マニュアルの作成 など

 

ワンポイント

災害の急性期において、組織体制と医療支援の7原則「CSCATTT」(スキャット)というものがあります。それぞれの頭文字をとった「CSCATTT」、あらゆる災害医療現場でマネジメントの基本として活用されています。

  1. Command & Control…指揮命令・統制
  2. Safety…安全
  3. Communication…情報伝達
  4. Assessment…評価
  5. Triage…トリアージ
  6. Treatment…治療
  7. Transport…搬送

 

災害支援ナースとは

こうした災害現場で力を発揮するのが「災害支援ナース」です。発足は1995年の阪神・淡路大震災後。看護職能団体の一員として、被災した看護職の心身の負担を軽減し支えるよう努めるとともに、被災者が健康レベルを維持できるように、被災地で適切な医療・看護を提供する役割を担う看護職のことです。

 

全国の都道府県看護協会に登録されている災害支援ナースの人数は、東日本大震災をきっかけに4,803人からおよそ7,000人に増加 。平成28年の3月には8,412 名となっています。ちなみに東京都の場合、44,473名(会員数)のうち災害支援ナースは552名(平成28年度末現在)。認知度がそこまで高くないのか、まだまだ多くはないようです。

 

  • 1995年の阪神・淡路大震災後に発足
  • 被災地で適切な医療・看護を提供する役割
  • 登録人数は8,412 名(平成28年3月現在)

 

災害支援ナースになる条件は

「災害支援ナースになりたい」と思っても、すぐに誰でもなれるわけではありません。看護師としての経験があり、養成のための研修に参加する必要があります。

 

  • 都道府県看護協会の会員であること。
  • 実務経験年数が5年以上であること。
  • 所属施設がある場合には、登録に関する所属長の承諾があること。
  • 災害支援ナース養成のための研修を受講していること。

 

災害支援ナースとして登録する際に望ましい条件は

また、登録するにも望ましい条件があります。「望ましい」なので必須ではないものの、いずれも対応した方がいい内容です。

 

  • 定期的(1年に1回程度)に、日本看護協会または、都道府県看護協会で開催する災害看護研修もしくは合同防災訓練への参加が可能であること。
  • 災害看護支援活動も補償の対象に含まれる賠償責任保険制度に加入していること。
  • 帰還後に都道府県看護協会が主催する報告会・交流会などへの参加が可能であること。

 

災害支援ナースは自己完結

活動時期としては、発災後3日以降から1ヵ月間が目安。1人の活動期間は原則として、移動時間を含め3泊4日となっています。災害支援活動は基本的にボランティアで、「自己完結型」が原則です。衣食住にかかわる必要なものは持参し、現地に負担をかけてはいけません。また、支援期間中はお風呂に入れないことも普通です。飲み水の確保すら難しい場合、体を洗っているどころではないですからね。トイレが使えないときは、持参の簡易トイレや紙おむつを使うこともあります。ほかにも支援活動を行うための書類や物品、自分の身を守るための雨合羽やマスクなど諸々あるので、研修やマニュアルなどでしっかり確認しておく必要があるでしょう。

 

  • 1人の活動期間は原則、移動時間を含め3泊4日
  • 基本的にボランティア
  • 衣食住にかかわる必要なものは持参。お風呂、トイレが使えないことも覚悟

 

現地での活動内容

生活環境の支援や食事・保清・排泄への援助、睡眠・プライバシーの確保の援助。ほかにも精神面のサポートや健康管理、感染予防などがあげられます。心身ともに疲弊した被災者にとって、心に寄り添ったケア・声がけはとても大切になってきます。孤独になりがちな高齢者、乳幼児を連れた母親や妊婦はとくに心細さを感じるため、看護師とのコミュニケーションがホッとするきっかけになるのです。

 

  • 生活環境の支援や食事・保清・排泄への援助
  • 睡眠・プライバシーの確保の援助
  • 精神面のサポートや健康管理、感染予防 など

 

DMAT(ディーマット)との違い

災害地で被災者を支援するといえば、DMATも聞いたことがあるでしょう。混同しがちですが、実際には異なります。

 

日本DMATは2005年4月、厚生労働省により発足。災害派遣医療チームDisaster Medical Assistance Teamの頭文字を略して“DMAT”と呼ばれています。医師、看護師、業務調整員で構成され、大規模災害や多傷病者が発生した事故などの現場に急性期(おおむね48時間以内)に活動できる機動性を持った専門的な訓練を受けた医療チームです。主な活動内容は広域医療搬送や病院支援、域内搬送、現場活動など。DMATに参加できるのは災害拠点病院に勤務する看護師で、日本DMAT隊員養成研修を修了する必要があります。災害拠点病院とは、日本において地震・津波・台風・噴火等の災害発生時に災害医療を行う医療機関を支援する病院のこと。平成23年1月1日現在の指定状況は609病院となっています。

 

  • 「災害急性期に活動できる機動性を持ったトレーニングを受けた医療チーム」と定義
  • 活動は、災害の発生からおおむね48時間以内の急性期
  • 参加できるのは災害拠点病院に勤務し、日本DMAT隊員養成研修を修了した看護師

 

災害支援ナースについていかがでしたか?以前、自ら被災しながらも、看護師として活動していた女性にお話を伺う機会がありました。子供たちを放っておいて良いのだろうか。私だってつらいのに…と限界を感じていたときに、全国各地から仲間が助けにきてくれて、本当に嬉しかった。救われた気持ちだった、とおっしゃっていました。

被災者を助けたい!と思っても当然、誰もがなれるわけでなく、看護師だからこそ出来るこの活動。関心を持たれた方は、一度調べてみてはいかがでしょうか。

 

参考:日本看護協会「災害看護」、厚生労働省「日本DMAT活動要領」

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもご購読できます。

コメントを残す

*